コーチング・マネジメント―人と組織のハイパフォーマンスをつくる
もちろん、コーチングスキルの方法についても十分ページが割かれており、特に相手への要求(リクエスト)の方法、話の聞き方(リスニング)、質問の仕方(クリエイティブクエスチョン)など、要点は具体例を交えながら詳しく書かれている。また、一般の読者だけでなく、プロのコーチあるいはコーチをめざす人も対象にしているため、「現役コーチのためのチェックリスト」「コーチのコア・コンピタンシー」といった項目も設けられている。
文章は簡潔で読みやすく、予備知識がなくても十分に理解できる。また、チェックリストや各章のまとめなど、実用に役立つ工夫も凝らされている。コーチングを小手先のテクニックではなく、理論からしっかり学びたい人におすすめの1冊。(戸田啓介)
コーチング―言葉と信念の魔術
落合というと、とかく個人主義的なイメージばかりが強調されがちだが、実は現役時代の落合は、投手がピンチに陥ればすかさずアドバイスをしにマウンドに駆け寄ったり、同じチームの打者がスランプに陥っていれば相談に乗ったりと、コーチあるいは兄貴分としても重要な働きをしていた。結果、「落合効果」という言葉が生まれたほどだ。
本書では、その落合の名コーチとしての側面を垣間見ることができる。あくまで個を伸ばすことに主眼を置き、裏方に徹する姿勢や、短所を指摘するのではなく長所を伸ばすことに注力する方針、手取り足取りのやり方を否定し、選手の自助努力を促す姿勢などにマネジャーが学ぶことは多いだろう。また、個人が組織の中でいかにして付加価値を高め、能力を発揮していくべきかという点にも言及している。チームを何度も優勝に導き、自らも2年連続三冠王をはじめとする偉業を成し遂げた落合だけに、その言葉には説得力がある。
成果主義、雇用流動化の時代には、これまでのようなトップダウン式の教育・指導方法は通用しない。本書は、現在注目を集めるコーチングの基本を説いた本として、また上司と部下双方の視点を示した本として、意義のある1冊である。(土井英司)